
昨今、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)など新興国の経済発展には著しいものがあり、それ以外にも将来にわたって大きな経済発展が予想される新興国予備軍が存在します。これらの国々に対する出願は今後益々増加していくことが予想されます。そこで、これら新興国、新興国予備軍と称される国々の知財制度をあらためて確認していき、今後の知財戦略の参考にしていきたいと思います。手始めに(次回)、ロシアあたりからスタートしてみます。
2011年(平成23年)は、12月28日までの営業となります。
2012年(平成24年)は、1月5日からの営業となります。
皆様、よいお年を。
1.ライセンス契約の保護の強化
従来、通常実施権者は、その通常実施権が登録されないと、そのライセンス契約後に特許権や専用実施権を譲り受けた者から差し止め請求などを受けた場合、対抗することができませんでした。しかし、通常実施権の登録は実務上困難である場合が多いため、通常実施権者を適切に保護できるよう、登録がなくても上記のような差止請求等に対抗できるような制度となりました。
2.共同研究などの場合における発明者の保護の強化
従来は、共同発明者の一部が勝手に出願してしまった場合や発明者でないものが勝手に出願してしまった場合、当然に特許権の移転が認められていたわけではなく、真の発明者等がとりうる手段も特許無効審判の請求等に限られていました。
しかし、このような場合でも、容易に特許権を取り戻すことができるようになりました。
3.制度の利便性の向上
(1)特許料の減免期間が3年から10年に延長されました。また、11年目以降の意匠登録料の見直しがされました。
(2)特許、実用新案の場合、出願前に発明や考案を公知にしてしまった場合、ある一定の条件を満たさなければ保護がされませんでしたが、その条件が大幅に軽減されました。
4.迅速かつ効率的な紛争処理
(1)従来は、特許無効審判の審決に対する訴えを提起した後でも、所定の期間内であれば訂正審判の請求が可能でした。そのため、裁判所から特許庁に事件が差し戻され、その後また審決がされるとそれに対する訴えが提起される、といった手続が繰り返し行われるという問題がありました。
そこで、審決に対する訴えが提起された後は訂正審判の請求ができないこととし、その代わり無効審判の段階での訂正の機会を確保することとしました。
(2)従来は、何人も確定審決と同一の事実・証拠に基づいた審判の請求はできない旨が規定されていましたが、その確定審決に係る審判請求人以外であれば審判請求を認めるようになりました。
5.不正競争防止法
(1)刑事訴訟における営業秘密の保護が強化されました。裁判においては、営業秘密の内容を伏せて、本来のものとは別の名前や呼び方等が用いられるようになります。
また、公判期日外の期日においても、証人等の尋問や被告人質問を行うことができるようになります。
(2)音楽・映像ソフトやゲームソフトなどのアクセスコントロール回避装置に対する規制が強化されます。
従来は、アクセスコントロールを回避する機能(例えば、ゲーム機において、正規のものではない、ネット上に違法にアップロードされたゲームソフトでも動作するようにできる機能)のみを持つ装置が規制の対象でしたが、その他の機能を有するものであっても規制されるようになります。
また、アクセスコントロールを回避する装置を提供する行為(販売など)について、刑事罰(懲役5年以下、罰金500万以下、これらが併科される場合もあります)が導入されます。
これらの改正は、公布の日(平成23年6月)から、1年を越えない日から施行されます。